「茶の湯とはただ湯を沸かし茶をたててのむばかりなる事と知るべし」(利休百首)
このように茶会・茶事では亭主が点てた一服の茶を、招客がいただきますが、そこには香をたき、床を書画・花などで荘(かざ)り、炭を熾して火相を整えるなど招客にその一碗を供するために心配りがなされております。
その思いを一碗に容れる器、そしてその思いを頂戴する一碗の器が「茶碗」になりますので大変重要な道具といえるでしょう。
【茶碗の分類】大きく三つに分類されています。
・中国製の唐物
・朝鮮半島製の高麗物
・日本製の和物
他に東南アジア、ヨーロッパ製の物も取り上げられますが数は多くありません。
◎唐物茶碗宋代の喫茶文化が伝わった12世紀末期に渡来したと考えられ、その代表が天目や青磁の茶碗で江戸期には染付・赤絵の茶碗が登場します。
日本からの注文によっても焼かれました。
◎高麗茶碗李氏朝鮮王朝時代の製品で日本では室町末期から茶会記に登場します。
井戸・斗々屋(ととや)・雲鶴・熊川(こもがい)・呉器(ごき)など民間の窯で焼かれたものが茶碗として見立てられました。
また他に、日本からの注文に応じてつくられたものには、御所丸(ごしょまる)・伊羅保(いらぼ)・金海(きんかい)・御本(ごほん)などがあります。
◎和物茶碗16世紀後半に美濃と京都で作られはじめます。瀬戸茶碗と楽茶碗に当たります。
瀬戸茶碗は黄瀬戸・瀬戸黒・志野・織部などがあり焼成技法・器形において他に大きな影響を及ぼしました。
一方で楽茶碗は千利休の創意を受け楽長次郎が焼き始め今日までその技法が伝えられています。
※江戸時代以降
特に西日本各地においては数々の茶碗が競うように焼かれたようで、陶器・磁器・焼き締め・色絵など、それに加え器形にも次々と新しい試みがなされ多様な展開を見せてきました。
【部分名称】 ・口造(くちづくり)見どころの一つ、丁度口の当たる部分です。
・茶巾摺(ちゃきんずれ)口造から少し下の部分。茶巾で茶碗を清める際親指の腹があたる部分。
・茶筅摺(ちゃせんずれ)茶巾摺の茶を点てるときに茶筅の当たるところです。
・見込(みこみ)茶筅摺より下の部分をいいます。
・茶溜(ちゃだまり)り見込みの中心部分。見込みとほとんど区別のないものもあります。
・口辺下(くちべりした)口造りの下から茶巾摺の外側をいいます。
・胴(どう)口辺り下から腰までの部分をいいます。茶碗全体の形を決める要素となります。
・腰(こし)胴から高台脇へと曲がっている部分をさします。
・高台脇(こうだいわき)腰から高台の際までの高台周辺部分をさします。
・高台(こうだい)底の中央にあり茶碗を支える部分。茶碗の形を構成する要素となります。
様々な形があります。(切高台、割高台など)
・兜巾(ときん)高台の中心で尖った部分。これが無く箆目(へらめ)や渦になっているものもあります。
【形状と種類】
・平茶碗
口が広く、浅いもの。荒い茶巾など涼味を演出する極暑の点前に用いられます。
・筒茶碗
筒形の茶碗で、深筒、半筒があります。極寒期に茶碗をよく温めるための絞り茶巾点前に使用します。
その他、形と名称のみで羅列させていただきます。
天目、桃、胴締(どうじめ)、腰捻(こしねじ)、洲浜(すはま)、井戸、蕎麦(そば)、呉器、紅葉呉器、御本、金海、御所丸、粉引(こひき)、伊羅保、筆洗(ひっせん)、掛分(かけわけ)、雨漏(あまもり)、斗々屋、三島、塩笥(しおげ)、編笠(あみがさ)、安南(あんなん)、楽、沓(くつ)、馬上盃(ばじょうはい)、馬盥(ばだらい)など。
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参考文献『茶道具百科』淡交社
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